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生産者インタビュー

エビス農園

目指せ、脱‵香酸柑橘′

 皮をむいてそのまま食べておいしいミカンやオレンジ、これに対して、果肉をそのまま食べるには酸っぱいが、果汁のみを搾って料理にひと味添える役目を果たす柑橘がある。これを「香酸柑橘(こうさんかんきつ)」と言う。レモンはこれに当たり、他にもユズやカボス、スダチなどがある。
 これまでレモンは、ユズに並ぶ香酸柑橘としての地位を築いてきた。ひと搾りのレモン果汁が料理の味わいに大きな変化をもたらしてくれる。でも搾ったらおしまい。接ぎ木して育てても実が成るまで2~3年というレモン、食卓に届いてからの命はあまりにも儚い。
 そんな香酸柑橘を脱しようとしている面白いレモンに出合った。尾久比島の「エビス農園 国産オーガニックレモン」だ。尾久比は、安芸灘とびしま海道の1つ、豊島の南約300mにある、周囲4.4㎞という小さな無人島。農園主の胡子知生さんは、ここに毎日のように専用ボートで通い、露地でレモンを栽培している。 

無人の島という環境を最大限に生かす

 竹原市の対岸にある大崎上島と呉市の大崎下島は、瀬戸田と並ぶ県内屈指のレモンの産地。明治31年(1898)、広島県で最初にレモン栽培が始まった場所と言われ、120年以上の歴史をもつ。尾久比島はこの下大崎群島に属し、陸路こそないものの、レモンが育つ環境では双璧をなす。
 島栽培の利点は、陽光と傾斜地が挙げられる。小さな島の畑は、必然的に山の傾斜地となる。太陽は間近に感じ、さらに目の前に広がる海からの照り返しで、レモンはダブルの陽光に照らされる。また柑橘は、水が不足すると、それがストレスとなり果実の糖度が増す。傾斜地は水はけが良く、適度に乾燥状態を起こすため、糖度が高いレモンになりやすいのだ。
 さらに胡子さんがもっとも重視しているのは、土づくりだ。露地栽培で、且つ樹上成熟させるレモンは、土壌環境がその味を大きく左右する。藻塩の原料としても知られるホンダワラという海藻を集め、樹の根元にマルチのように敷き詰める。実際、これがどういう効果をもたらすかは分からない。しかし、微量栄養素であるミネラルを多分に含む海藻は、栄養分になるのでは? 雑草が生えにくくなるのでは? 保水効果があるのでは? そんな仮説を立てては実行し、農薬や除草剤には頼らない栽培方法を模索し続けている。他の園地の影響を受けることがない無人島だからこそ、徹底してこだわり続けることができる。

苦くない! 味わえるレモン

 輸入レモンに比べて、味も香りも格別と評価の高い広島のレモンだが、皮が厚く、時にとんでもなく苦いことがある。この広島尾久比レモンはどうだろう。おそるおそる食べてみると、レモンを味わえるということに驚いた。皮ごと食べても、全くと言っていいほど苦味はなく、口の中でずっと噛んでいられるのだ。これならそのまま刻んで食べるといい。煮込み料理に使ってみると、かすかな苦味は感じられたが、これぞレモンの持ち味と納得できた。
 こんな丸ごと、ゆっくり噛んで味わえるのは、その味もさることながら、農薬も除草剤も使わないで育ったレモンだという安心感があるからだろう。
 安心して噛んで味わえる広島尾久比レモンを作っているエビス農園の胡子知生さん。GGAPの認証取得も視野に入れ、環境に配慮した持続可能な農業を着実に実行している。


文/平山友美
料理/平山友美

エビス農園

住所
広島県呉市蒲刈町4427
TEL
0823-66-0507
FAX
0823-66-0507
代表者
胡子 知生
担当者
胡子 知生
創業
平成30年12月
面積
1ha
従業員
2名
生産物
レモン
情報更新日
令和3年09月16日

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