圃場が分かりにくい場所にある…ということで、待ち合わせ場所で待機していたら、カッコイイ4人のお兄さんたちが現れた。商品であるにんにくはもちろん、それを作るファーマーとしての自分たちをどう見せるか、どう売っていくか、確固たる戦略がありそう!?
いつもとちょっと違った雰囲気でスタートした「げんきのにんにく」の取材。代表して対応していただいたのは、林武彦さん。2020年の今年は、栽培を始めてまだ2年目だというのに、約2ヘクタールほどあるという畑で、見事なにんにくを育てている。
実はにんにくにも様々な品種があり、球の大きさや色、りん片の数や大きさなどに違いがある。「げんきのにんにく」は、福地ホワイトという全体が白くて球が大きく、寒い地方でよく育つ品種だ。りん片は6個くらいついている。農業経験もなかった林さんたちは、にんにくの産地で知られる青森県田子市で研修を受けたり、沖縄など他の産地を訪れてみたりと研究を重ね、この世羅の気候に合った育て方について考えた。品種選びもポイントだ。にんにくは、その気候によって適した品種がある。寒い地方で育つ品種を暖かい地方で植えると、りん片ができず一つ球になってしまうことがある。りん片が1つしかないと、次の年に増やすことができなくなってしまうから注意が必要だ。
にんにくは、球が大きくなって葉が枯れたあと、休眠に入る。この間、たとえにんにくが育ちやすい温度や湿度を与えたとしても、眠りから覚めることはない。休眠期間も含めるとタネ球を植え付けてから収穫するまでに8~9ヶ月かかる。この長い期間に、病気や害虫にやられないように立派に育てるには、良い畑が必要なのだ。土の中に広く深く、しっかりと根を伸ばすことができて、にんにくが栄養分をしっかり吸収できるような環境づくりをする。一般的には水はけの良い土が選ばれるが、林さんたちはあえて水田の跡地を選んだ。雨が降ると水びたしになってしまうような土だが、畝を高くもって水はけを良くするなど工夫をした。にんにくにとって厳しい環境で育てることで、本来の力を引き出そうと考えたのだ。また土に酵素を混ぜ込み、根から少しずつ栄養を吸い上げることができるようにした。スパルタ式で育てる分、土壌検査は怠らない。にんにくは、土の酸性が強いと根の伸びが悪くなったり、土が粘土質だと栄養分に偏りが生じやすかったりするからだ。
タネ球を選ぶことも重要だ。にんにくは、大きなタネを植えると大きな球になるが小さいタネを使うと小さい球にしかならない。決して親を超えることがないのだそう。林さんたちは、収穫したにんにくの中から選りすぐり、大きさごとに6段階に分ける。そして水分量や土壌検査の結果を加味しながら、畝ごとに違うサイズのタネ球を植える。発芽のタイミングなど、なるべく足並みがそろうよう、クラス分けをするのだ。
休眠期間は世羅の自然環境だけに委ねるが、にんにくの成長を阻害するような雑草を取ったり、栄養状態をチェックするなどきめ細かく世話をする。こうして育てられたげんきのにんにくは、茎を中心にりん片がしっかりと固まっていて、貯蔵するときに日持ちが良くて長持ちする。
立派に育ったにんにくは、味はマイルドで適度な香りを放つ。にんにくは常に料理の脇役だが、げんきのにんにくは主役になりたいと願っている。林さんたちは、その願い通り、いつかはコイツを主役にしてやりたいと思っている。「広島県のにんにくと言えば、げんきのにんにく!」と呼ばれる日を待ってる。
文/平山友美
料理/平山友美(げんきのにんにくの「ソパ・デ・アホ」)